2013年12月31日火曜日

報告:写真編

最初に言っときますが、普通種ばっかですから!

まずは汽水域で採れた魚から。


ツムギハゼ

ミナミトビハゼと並び、沖縄の汽水域ならどこにでもいます。
しかも水際ぎりぎりのところに沢山いるので、嫌でも見ることができます。
歩いていくと急いで逃げていきますが、
どこかのんびりしてるので、テキトーに網を振り回してるだけで捕れちゃいます。
やはり、体にフグ毒(テトロドトキシン)をため込んでるあって、ヨユーぶちかましてます。
水際はサギみたいな捕食者もいる危険な場所なのですが、
こいつの毒性は周知済みで、鳥たちも手を出さないのでしょう。
オキナワフグも一緒に群れをなしているのですが、上から見ると両者はそっくりです。
毒のある者同士の戦略的な擬態によって手を組んだ彼らは、
水際という危険な場所のニッチを独占しているという印象です。

保存食として飼ってはいけないツムギハゼですが、丸っこい可愛い顔をしており、
非常に丈夫なこともあって、水槽での飼育に向いたハゼだと思います。
ただし、おっとりしているので、気の荒いハゼには負けてしまいます。
アベハゼ属、インコハゼ、ハスジマハゼなどとは一緒に飼えませんでした。

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クモハゼ

これまた普通種中の普通種ですみません。
そういえば、クモハゼの写真撮ったことなかったな、と思って撮りました。
別に沖縄まで行かなくても、千葉とか伊豆でも沢山採れます。
本州では黒潮の影響の強い地域の外洋に面した磯でよく採れる印象があります。
和歌山とか高知では嫌になるほど採れます。沖縄ではもっと嫌になります。
でも、何気に同属他種が多いので、注目してるのですが、他の種類は一度も採れてません。
もっと深いところにいるのだと思います。

海水でも汽水でも飼育できるスーパー丈夫なハゼです。
が、チチブ属と同じくらい気が荒いので、同じ水槽にハゼ類はこれ一匹しか飼えないでしょう。
小さい水槽でもよいので、1匹飼いしてやると、人に慣れてペット的に飼えます。

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ハスジマハゼ

またしてもスーパー普通種。沖縄の汽水~沿岸域では、嫌になるほど採れます。
この写真は分かりにくいのですが、1cmくらいの稚魚です。
12月は稚魚の季節なんですね。
去年の10月に採った成魚はうちの水槽で二倍くらいに成長し、ふてぶてしさもmaxですが、
このサイズだと青いスポットがキラキラ反射して奇麗です。

自然では石の周りに巣穴を作って住んでる感じがするのですが、
水槽で飼うと、そんな挙動は見せず、シェルターに隠れてるだけで、穴は掘りません。
テッポウエビと一緒に採れることも多いですが、別に共生とかはしてないみたい。
飼育下では非常に丈夫ですが、気は荒いです。
ただし荒すぎるほどではないので、同じくらいのサイズの適度に気が荒いハゼやギンポとは共存できます。
うちでは、インコハゼ、カザリハゼ、クモギンポ、コケギンポ、ハオコゼと同居中ですが、
それなりにバランスが取れているようです。

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スミゾメスズメダイ

リボンスズメダイと並び、汽水域を代表するスズメダイだと思います。
これも1cmくらいの稚魚が採れたので、思わず写真を撮りました。
このサイズはかわいいですが、成長すれば真黒になって気も荒くなると思います。
スズメダイは持ち帰らないようにしてるので、詳しい生態とかは分かりません。
シクリッドと同じように、ひたすら仲間同士でバトルを繰り広げ、
弱った者から落ちて行ってしまうのだと思います。

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タカサゴイシモチ属(たぶんセスジタカサゴイシモチ)

わから~ん!
このグループは完全にノーマークでした。
たった今、写真を拡大しながら魚類検索で調べてるのですが、
肝心の特徴を撮り逃がしてます。
同定ポイントを事前に把握してなかったので当たり前ですが…。
それでも写真をめいっぱい拡大した結果、頬の鱗は2列っぽいので、タカサゴイシモチじゃない。
たぶんトゲナガでもなくて、
写真じゃ分かりにくいけど尾鰭後縁が黒く縁取られてるので、セスジだと思います。

調査屋だった頃は現場で分からない魚はホルマリンに突っ込めばOKでしたが、
あんな危険な薬品を飛行機に持ち込んだりしたら、つまみ出される気がします。
研究者の方達はどうしてるんだろう?
この手の運動量の多い魚はすぐ死ぬので、生かして持ち帰るのも諦めました。

たった今、魚類検索を調べたおかげで、
インディアングラスフィッシュに、インドタカサゴイシモチなる和名があることを知りました…。
タカサゴイシモチの仲間は、熱帯魚界でいうグラスフィッシュ・グラスパーチなのれす。
この魚も水槽で泳がせれば、それなりにキレイな気がします。

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ヤエヤマノコギリハゼ

今回最大のヒットがこれかも。
もう帰ろう、と戻る途中で、テキトーに網を振り回していたら、一度に3匹とれてビックリ。
こういうことがあるから汽水域の採集って楽しいんですよね~。

熱帯魚界でいうところのクレージーフィッシュ。
生き残るために木の枝に擬態する戦略を選んだだけなのに、
外人によって勝手に頭が狂ってると決めつけられて可哀そうです。
日本人なら「ノコギリハゼの仲間」と呼びましょう!

「もうちょっといい写真撮れなかったのかよ」と自分でも思いますが、
現場にいると写真を撮ってる時間って絶望的に無駄に感じるんですよね。
写真撮ってる暇があったら一秒でも網を動かしていたい。
野外で魚を追いかける人は「写真家タイプ」と「漁師タイプ」に大別されると思いますw。
僕は写真にあまりこだわりがないんですが、
今回は雨がちで薄暗く、オプティオのピントが全然合わなくて発狂しそうになりましたw。
もっといいカメラ欲しいかも。

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汽水域で、現場で撮った写真は以上。
捕まえたけど写真撮らずに逃がしたのは、
勝手に網に入ってくるミナミトビハゼ(東京湾のトビハゼじゃ考えられないすね)、
どこにでもいるインコハゼ、
たぶんチチブモドキ(だと思うねんけどカワアナゴ属は全然わからん!)、
種類を調べる気力すら湧かないクロサギ科の誰かさん、など。

残りの種は水槽写真。

ヒナハゼ

趣味で魚とりを始めたころ、千葉の川で初めてこの魚をとった時は感動したなあ(遠い目)。
高知と和歌山に遠征したら腐るほど採れましたw。
黒潮に連動した分布をとる魚ですね。
でも少なくとも関東地方の子たちは越冬してるみたいだし、死滅回遊じゃないぽい。
温暖化に乗じて分布を広げてる可能性はある気がします。

この魚は色々と謎めいていて、本州の川では大体こういう場所にいる!という、
微環境データが自分の中ですごくハッキリしてたのですが、
沖縄では、あまりに違う環境にいたので驚きました(しかも沢山)。
簡単に言うと、渓流域の直下みたいな場所にいました。
その時は「南に行くほど汽水魚は上流に登りたがる理論」かしらと思ったんですが、
今回はまた違い、マングローブ域。
しかも今までの蓄積データを裏切り、流れの速く水深のある場所でも採れました。
逃がしてやると、しっかり水流に逆らって逃げていきました。

水槽で飼っていると、やる気のなさが素晴らしいほどで、
生存意欲あるのかこいつら、みたいなアンニュイさなんですが…。

純淡水から汽水まで色んな環境で採れ、しかも個体数が多いことを考えると、
見た目の弱々しさに反して、したたかさを備えた繁栄種なんだと思います。

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ミツボシゴマハゼ

日本で一番小さな魚は、このゴマハゼ類だったような(違いましたっけ?)
これも高知・和歌山で沢山とれたけど東京に戻るまでに皆死んじゃいました(合掌)。
持ち帰るのが難しいし、生きて到着しても混泳水槽だといつの間にか消滅(合掌)。
多分ゴマハゼ類だけで飼えば、しばらくは飼えると思います。

僕は底モノと呼ばれる魚が全体的に好きなわけですが、
同じ底モノでも、ナマズやドジョウに比べ、ハゼは圧倒的に寿命が短いです。
だからナマズみたいにずっとペット的に飼える種類は少なくて、
実験生物を一時的にキープしてるような感覚になりがちです。
チチブ属・カワアナゴ類・ヨシノボリ属等、1匹飼いでペット感覚を味わえる種もいますが、
それでも死ぬときはあっさり死ぬ印象があります。
回転率で勝負するグループだから仕方ないのでしょうね。

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タヌキハゼ(たぶん)

南にいくとアベハゼ属は多様化して、わけが分からなくなります。
たぶんタヌキハゼだと思うんですが、縦列鱗数なんか数えられないし、よくわからん。

去年の10月にも同じくらいのかわいいサイズ(2cm位)の子を1匹持ち帰ったのですが、
1年ちょっとで2倍以上に膨れ上がり、すっかりふてぶてしくなっちゃいました。
小さいサイズでも気が荒く、他のハゼの尾びれを食いちぎったりするので、
早々に隔離し、ろ過もつけずにプラケースで育ててきました。
アベハゼ属おそるべし。本州でとれるアベちゃんも手がつけられないからな~。
チチブ属には負けちゃいますけどね。バランスをとるのが難しい。

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ナミハゼ

今回初めて採れました!同じアベハゼ属でも、こちらは本当に嬉しい。
特徴がすぐに分かるところもいい。
サイズのせいか、タヌキハゼやアベハゼより繊細そうに見えますね。
まあ、飼ってるうちに暴れ出すのかもしれませんが…。
要注意で経過観察ですな。

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スナゴハゼ

本州で採れるマサゴハゼより大きめで、飼いやすいですが、
とてもおとなしいので、気の荒いハゼとの同居は避けなきゃいけません。
今回も家に持ち帰って、写真撮るまでアベハゼ属と同じバケツに入れておいたら、
尾びれをかじられちゃったみたいです。
ヒナハゼとかはかじられてないので、この魚けっこうトロいみたいです。
水槽で観察しててもおっとりしてます。
落ち着いてくると、大きな目に黒いラインが入り、とてもかわいらしいです。

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スズメハゼ(たぶん)

はじめて採った瞬間、なんだか全く分かりませんでした。
日光を反射してキラキラ光る感じがスジハゼに似てましたが、顔が全然違う。
「日本のハゼ」の写真を頼りに当たりをつけ、「魚類検索」で絞り込んでいくのですが、
種類が全く分からないハゼを追跡するこの作業、毎回燃えます。
しかし2cm位の稚魚のせいか、正直あんまり確証が持てないです。
ネットでもいろんな写真を見比べて、たぶんスズメハゼで間違いないと思うんですが。
同じキララハゼ属ってことで、採れた瞬間にスジハゼを連想した自分の感覚は、
それほど間違ってなかったのかな、と自己満足に浸ってみたり。
とにかく今回一番エキサイトさせてもらいました。
あとは水槽でもっと大きくなってくれれば、特徴がもっと出て確証が得られるかも。
でもスジハゼと似ているとしたら、水槽で育てるの難しい部類なんですよね…。

今回はここまでとします。

3 件のコメント:

  1. 沖縄と言えば「すくがらす」とアオブダイが真っ先に頭に浮かびます。私変でしょうか。
    フグ毒を持つハゼにはびっくりしました。さすがminny666さん。

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  2. 全然変じゃないと思います。
    変なのは食べ物にもならない小魚ばかり必死で追いかけてる僕の方です。

    「スクガラス」はアイゴ科の魚の稚魚ですね。
    お酒が好きな先輩から沖縄土産に買ってきてよって頼まれたことがあります。
    ちょうど季節はずれで、苦労して一瓶探し出して持ち帰ったら、「こんなに沢山いらない」と言われましたw。

    アオブダイは沖縄方言でいう「イラブチャー」に相当すると思われがちなんですが、
    実は「本物」の和名アオブダイはどちらかといえば温帯種で、沖縄ではほとんど獲れないそうです。
    イラブチャーの正体はナンヨウブダイなどの見た目が青いブダイの総称みたい。
    ブダイ類は南にいくほど種類が多くなり、僕もわけわからん部類です。
    「イラブチャー」の刺身、僕は嫌いじゃないです。
    でも味にうるさい後輩は、磯臭さ(ブダイ類が藻類食なのに起因する)がどうしても気になるって言ってました。

    ツムギハゼがフグ毒の持ち主なのは、ちょっと魚が好きな人なら割と誰でも知ってるんじゃないかな~。
    僕は小学生の頃から知ってました(図鑑オタクだったのでw)。
    沖縄ではおいしい魚がたくさんとれるから、マングローブ帯にいる小さなハゼなど誰も食べないので、たいして実害はないのだと思います。

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  3. そうか、俺の知ってるアオブダイは見た目が青いブダイのことだったのか。沖縄出身の父は「イラブチャー」ってよく言うから。

    すごいね。知識と経験に裏付けされた実力ってこういうものなんですね。さすが専門家だな。
    スクガラスは、瓶売りなので量が多いんですよね。しょっぱいし。

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